オカルトの素地(笑)

幼稚園の頃、夏。夜中に目が覚めて、何やら気配があるものだから、あわてて母親にありのままを伝える。「お母さん、女の人みたいなのが居て、そこから冷たい感じがする」母親曰く。「涼しくていいじゃない」。
一時が万事。気にしたら眠れない家なので、皆、はっきり見たりはないけれど、あったらなんやねんという認識。お化けが怖いというのは、幼稚園ぐらい以降の後付けの感覚なので、怖いのは嫌だけれど、今でもなんとも微妙な感じ。小さいころ、一番怖いのはショッカーだった。奴等は俄然具体的だった。
派手系といえば、20歳の頃。ジャラジャラと鈴音をたてて何かが来て、俺の足をむんずと掴み、凄みをきかせて曰く、「うごけまい」。金縛りなら当たり前。ぼけるなら、突っ込む余裕をくれ。悔しくて忘れられない。
そんな意味で、一番嫌だったのは、これも20歳の頃。夜中、バイトから帰って小便済ませ、部屋に向かおうとして、あらぬ気配を感じ、廊下の電気を点けたら、そこにはムササビ。思いきり目が合ったんだけれど、ムササビは目をそらしもしないで鳴いた。連中の鳴き声は「ギリギリギリギリ」。田舎なので、一度ならず姿は見ていたが、そんな鳴き声だったとは知らなかった。しかも、合わせた目を一向にそらさない。敗けを認め、電気を消して放置。あの瞬間感じたやり場の無い疲れを越えるものは、まだ無い。