純愛中毒

ギンレイホールにて。
箱はあっても、ろくなディティールが無いので、描写に入った瞬間まぶたが重くなる。ベッドの部分が少し長かったので、不覚にも落ちてしまった。次に目を開けたら朝になって、メデタク兄嫁と義弟で抱き合っていたので、まあ、見逃した箇所は無いものと思う。
大筋は納得できても、本当にきちんと噛み合っているかというと、そうでもないので、結局は腕力不足で、愛ね。愛。まあ、多少歪んでいても、それはそれで、ロマンチックってことで、ええやんけ。とは、決してならない。
弟の、兄になりかわりたかった心というのが、突っ込み不足のせいで、単なるナイーブな恋愛感情と、狂いたい、狂えないという程度のオナニーにしかなっておらず、意識を回復する前と、その後にくる、世界でたったひとつしかない(筈の)ペンダント。料理の腕前。家具作り。雨で思い出す事。ネタが明かされれば全て、ただの不整合に堕してしまい、一気に興醒めして、取り返しがつかないところまでいってしまう。
登場人物達の、上の世代の人間、お父さん、お母さん、親戚というものが出てこないし、他の身内も一切居ない様だから、生活なんてあっても無くても同じ。なら、とっとと兄弟同時事故を済ませて、兄嫁視点で、意識が戻った義弟だけど、魂は夫って、あんた、そりゃあないでしょ。でも、本当に魂は夫のものなの?それとも、義弟の嘘?でも、なんでそんな嘘を?というのと、もし、義弟の視点も必要なら、許せ兄貴!俺は、あんたが自分の恋人だって紹介してくれる前から、彼女の姿を偶然見かけて、心臓を射抜かれていたんだ。俺は、あんたになる。あんたになって、彼女を愛したい。許してくれ!みたいな葛藤でも描いてみたら、どうだったのかと、そんな風に思うともう、残念でしょうがない。
兄嫁の妊娠、兄の脳死が決まって、海に散骨する件、やはり義弟は演じていた!という事実の発覚。でも、兄嫁は既に義弟を受け入れている!義弟が兄を装っていたのも、兄嫁に対しての狂わんばかりの愛だった!って。もうねえ、美味しい山は本当に山ほどあるのに、全部スルーですわ。
で、最後に、わざわざ時間戻して、本人告白の最悪のネタバラシなんかする暇があったら、5分でも10分でも作ってやって、兄の手紙は弟の案。兄の気の利いた行為の数々も弟の入れ知恵。シラノ・ド・ベルジュラックかい!と投げ技のひとつもくりだして、もう一度、最初からとか、そんな風に丸くおさめたれよ。ロマンチックのかけらもないというか、パズルにしても下手過ぎです。
つまらんけど、激しく腹も立たず、ただ、時間をこんなもんを見ることに費やしてしまったことだけを後悔する一作。見てナンボという点では、非常に修行になりました。
役者はみんなチャーミング。む。ひょっとして、アイドル映画だったか?まあ、いいや。