飛び込み

事務所の扉をノックする人が居るので、返事をすると、見知らぬ若者が入ってきて名刺を突き出す。
「◯◯の者なんですが……」
中小企業向けの金貸しみたいな会社の名前。一旦名刺を受け取ったものの、無断でスリッパに履き替えて、他所の会社に入ってくるというのがたまらない。髪をちょいと立てて、なんとも今風の若者。
「上がってこいって?」
「え?」
インターフォンあったでしょ?」
「え、そんなもんありました?」
「うん。あるよ。ピンポンしてないんだ(俺、名刺を突っ返す)」
「あ(戻った名刺を受け取る)」
「はい、行って行って」
「あ、あの、三階とかにつながるんですか?」
「まぁ、それもこれも、ピンポン押してから」
若者、降りて行く。インターフォンのチャイムの音。
静寂。