解雇記

さて、逆指名で俺の給料を出せない旨、上司に内示が出、上司の後押しもあって、“やむを得ず解雇を承諾する”ってことで解雇されたのであった。
内示ってまぁ、間に人が居るってのは良いことで、頭数あわせで役員になった経緯やら、今期の役員も、約束違いで降りさせてもらえなかったのに、後釜になる今の上司を引き込んだ途端に自動的に交代となったのに比べれば、明日から来んなと言われるよりは格段にマシな感じ。
最初にトントンと解雇でハナシが丸く収まって、あらあらと思っていたら、1時間ぐらいしてまた社長に呼ばれ、「6月21日着手、7月15日納品で仕事をお願いしたい。で、今後も継続して仕事を出していきたいので、自己都合退職ということにして欲しい」と、そんな風に持ちかけてくるので、
「仕事はありがたいですが、自分の都合で退職するわけじゃないんで、事実通り解雇でお願いします」
と言うと、「会社にも自分にも傷つけて解雇にこだわるんですか」とくる。「解雇の傷も含めていたしかたないのでは……」と取り合わないでいると、「仕事を受けてもらえれば、実質給料相当分になるんですよ」とか、どこまでもナチュラルにバーターを求めてくるので、「仕事を出してもらえるのは嬉しいけれど、解雇の事実を曲げることとの関係が理解できない」と言っているうちに、予告手当のハナシになる。予告手当、知ってはいたけれど、どんな風な出方をするのか、詳しくは認識していなかった(笑)。というか、結局、“金”も“解雇”も出したくないだけのハナシというところに落ち着く。
仕舞には、社長が激昂して「わかった。払う!」と叫んだのを皮切りに、立ち上がってわめき散らし、「こうなったのは全部俺のせいか!」とか言い始める。経営判断をしていたのは彼。
「俺は全てを犠牲にしてきたんだぞ!1年我慢したんだ!誰の金だと思ってるんだ!」って、やっぱりどう見ても俺の都合じゃないし、解雇を決めた口に、フリーになった途端、継続してまわせるなんて保証されても何にもならない。
同じ部屋に、入社してひと月ちょいの大学卒業したてのプログラマー見習いが居るのに、そういうブチ切れ方をしていると、彼をめでたく何処かに派遣した暁には、客先のエンジニアと比べられてしまうだろうに。経営者の苦悩や孤独には、並々ならぬものがあるのだと理解。
プロパーが全員辞めて、派遣要員をハローワークから引っ張れなくなるからには、プログラマーの人出しで経営を安定させる今の形態にも影響は大きかろうに。
「今回お願いする仕事は無かったことにしてください。この先仕事を出すという件も、あればということで」
「はい。あればぜひ、お願いします。」
で、チャンチャン。