吉野朔実 period 1巻

『少年は荒野をめざす』完結の頃から、デビュー作も遡り、ずっと楽しく読んでいる吉野朔実だけれど、これはちと辛い。登場人物の奇麗な役割分担はいつものことだけれど、ハナシを出合い頭のタイミングでつなぐ駒運びが多くて、これが妙に鼻につく。父親の暴力におののく子供の視点の延長だろうか。出来の悪いホラーの驚かしみたいな効果にしか到達していない。このうえまだ、何を模索するやら。幸福な結末でなくとも良いから、幸福な物語であってほしい。いや、吉野朔実の描く、幸福な物語が読みたい。